酒蔵の壁を埋め尽くしている古酒の甕はすべて、人間国宝級の作家の作品ばかり。今では有名な作家でも、当時は売り出したばかりで、そんな新人作家を援助するつもりで買い込んだのだという。おそらくここは沖縄一の酒蔵に違いない。いい古酒は、こういう小さな部屋で飲むのがいい。余談だが、二〇〇二年に蔓去された高円宮憲仁親王は、毎年のようにお子様を連れてこの本部で遊ばれた。そのとき、謝花さんは必ず古酒を献上したという。憲仁親王が本部にやってきたのは、もしかしたら謝花さんの古酒を飲むのを楽しみにしていたのではないだろうか。
実は謝花さんのすごいのはそれだけではない。古来から古酒というのは、それぞれの経験でつくるものだった。たとえば、貯蔵する甕は素焼きがいいと言われるが、根拠があるわけではない。素焼きなら「酒は呼吸できるはずだ」という、何となくわかったような理屈からである。また、同じように仕込んでも、うまい古酒とまずい古酒ができるのはどうしてだろう。謝花さんは、おかしいと思った疑問を東京工大の先生と共同で解明していった。その結果、むしろ粕薬をかけた甕のほうがよかったり、甕に入れなくとも、瓶で寝かしても古酒になることがわかったという。そんなことをやっているうちに、謝花さんはいつの間にか沖縄一の古酒の理論家になっていた。謝花さんの影響で私も古酒づくりをはしめたが、これが実に奥深い。そして、楽しいのだ。
古酒も飽きないが、「城」はもっと飽きない。私か「城」に興味を持ったのはそんな昔のことではなかった。沖縄にはユタという職業がある。女性が多く、一種の民間霊媒師のことだ。ご先祖様や死者の霊と会話できるという。とまあ、こう書くと普通はバカバカしいとなるのだが、沖縄にいると、これがごく普通になってしまから不思議だ。沖縄には神懸かり的なことが普通に受け容れられる土壌があるのだと思う。ユタに運勢や商売、病気などを占ってもらうことを「ユタ買い」というが、特殊な人がユタ買いをするのではなく、「医者半分、ユタ半分」と言われるほど生活に溶け込んでいるのである。私もユタに占ってもらおうと、お願いしたことがあった。
ところが、「ヤマトの人ならミーグスクに行かないと先祖とお話できない」と言われて、そのままになってしまった。「ミーグスク」を、那覇にある「三重城」のことと知らず、私はどこかの古い城趾だと勘違いしたのである。というわけで、後日、あのときのミーグスクはどこにあるのだろうと調べているうちに、中城や今帰仁城など、本物の「城」を訪ねることになり、一瞬にして虜になってしまったというわけである。東シナ海から太平洋まで見渡せる中城などは絶景で、あの城壁の上に立つと、パラグライダーをやっていた頃を思い出してしまい、そのまま飛んでいきたくなってしまう。
沖縄の「城」がすごいのは、首里の街と京都の街の違いと同じで、本土の城は直線を基本にしているのに対し、沖縄の「城」は独特の曲線を描いていることだ。ここにも中国や日本と違った固有の文化がふんぷんと漂っている。中国も本土も城郭や都城の造営に直線を重視したが、沖縄の人たちは曲線に美を感じたのだろう。この曲線が実にエロティックで、何度見ても飽きない。とりわけ雨に濡れた「城」はすばらしく、何とも言えない色香を放っている。沖縄の巨大な門中墓(亀甲墓)は子宮を模したと言われ、幕の入口が女陰もしくは産道にあたる。城にもそんな雰囲気があって、たとえば中城など、石づくりのアーチ門などは女陰もしくは産道のようで、城壁全体が子宮のようにも思える。
2013年8月28日水曜日
2013年7月4日木曜日
できる企業ができる範囲で頑張る
目先で実施可能な簡単な策もあります。ISOのように、若い世代への所得移転や子育て世帯への配慮を掲げる企業の守るべき基準を作って普及させることです。強制ではなく、あくまで「できる企業ができる範囲で頑張る」のを顕彰し、消費者に対するイメージアップや人材確保につなげてもらおうという趣旨です。NPOか何かがさまざまな観点から企業の若い世代への所得移転の配慮のランク付けをし、客観的な認証を与え、マスコミもそのような努力を積極的に報道する。それだけで、企業の活動は長期的に大きく変わってくると思います。すべての企業に無理にもっと人件費を払えと強要して倒産などを増やしてしまうのは愚の骨頂。そっちの話は政府の最低賃金制度の徹底に任せつつ、民間としては人件費を増やす意欲と余裕のある企業だけを先に行かせ、それを宣伝させ、結果としてそういう従業員を重視する企業に若者が集まる土壌をつくるべきなのです。
ISOだって必ずしも儲かっている企業だけがやっているわけではない。小さい会社になればなるほど、経営者(=同族株主)の志の違いが行動の違いになっています。こっちの話も同じこと、志の高い経営のできる会社に先に行って実践してもらうことが大事なのです。「言い訳」付与と「値上げのためのコストダウン」で高齢者市場を開拓さて今までの議論では、控えめに保守的に、企業の売上総額自体はこれまでと変わらないままという前提で、そういう中でも若者への支払い分を増やしていった方がいいのだということを申し上げてきました。ですがもう一歩進んで、高齢者が死蔵している貯蓄を積極的に取りに行く、つまり高齢者にモノやサービスを買わせるということを、戦略的に追求することも可能ではないでしょうか。
それにより維持ないし増加できた売上を若い世代への給与に回せれば、内需はさらに成長し税収も安定し、高齢者の支えにもなります。これこそ高齢富裕層から若い世代へのとても有効な所得移転です。これまでも何度か触れてきましたが、最近になって史上最高益を更新した任天堂、ユニクロ、東京ディズニーリゾートの共通点は、高齢者も若者同様に買い求める商品、すなわちヒートテック、東京ディズニーシーを開発したということです。いずれも高齢者でも使いやすい、楽しみやすい仕様になっているにもかかわらず、年寄り臭いイメージがない。
孫のためだとか、値段の割には質がいいとか、高齢者の好みそうな言い訳もくっついています。同じように、自宅の耐震改修や成人病が改善する温泉旅行、貯金代わりに買って貯蔵できる高級酒や書画骨董、健康にいい無添加食品など、高齢者市場が拡大しうる分野はまだ無数にあります。彼らが中心に保有している日本人の金融資産の一%、一四兆円でも企業努力でモノ購入に向けさせることができれば、政府の景気対策の何倍もの効果があるのですよ。オレオレ詐欺だけにこの市場を開拓させておくというのは、余りに惜しいことです。それでは、先はどもさんざん語って参りましたが、車だの住宅だの電気製品だののような、一人の消費者が買う量が限定されているような商品、それも現役世代を中心に相手にしている商品の場合はどうなのでしょうか。
たとえば自動車産業。全体的には不振の中、よく売れているのがハイブリッドカーで、レクサスブランドの売れ行きも非常にいいそうですね。これらの成功は、すでに何でも持っている高齢者に買い替えの「言い訳」を与えることがいかに重要かを示しています。つまり彼らは若い頃ほど車に乗るわけではないので、少々車が古くなったとて、買い替えずに我慢しておくこともできないわけではありません。ただ実際にはお金も十分あるので、何か「これは決して無駄遣いではない」という言い訳さえ与えてもらえれば、モノを喜んで買いに走るわけです。ハイブリッドカーの場合の言い訳は実利面と理想面と二つもあります。前者がエコカー減税や買い替え補助金であり、後者が「地球環境を考えるのはいいことだ」という大義名分です。
ISOだって必ずしも儲かっている企業だけがやっているわけではない。小さい会社になればなるほど、経営者(=同族株主)の志の違いが行動の違いになっています。こっちの話も同じこと、志の高い経営のできる会社に先に行って実践してもらうことが大事なのです。「言い訳」付与と「値上げのためのコストダウン」で高齢者市場を開拓さて今までの議論では、控えめに保守的に、企業の売上総額自体はこれまでと変わらないままという前提で、そういう中でも若者への支払い分を増やしていった方がいいのだということを申し上げてきました。ですがもう一歩進んで、高齢者が死蔵している貯蓄を積極的に取りに行く、つまり高齢者にモノやサービスを買わせるということを、戦略的に追求することも可能ではないでしょうか。
それにより維持ないし増加できた売上を若い世代への給与に回せれば、内需はさらに成長し税収も安定し、高齢者の支えにもなります。これこそ高齢富裕層から若い世代へのとても有効な所得移転です。これまでも何度か触れてきましたが、最近になって史上最高益を更新した任天堂、ユニクロ、東京ディズニーリゾートの共通点は、高齢者も若者同様に買い求める商品、すなわちヒートテック、東京ディズニーシーを開発したということです。いずれも高齢者でも使いやすい、楽しみやすい仕様になっているにもかかわらず、年寄り臭いイメージがない。
孫のためだとか、値段の割には質がいいとか、高齢者の好みそうな言い訳もくっついています。同じように、自宅の耐震改修や成人病が改善する温泉旅行、貯金代わりに買って貯蔵できる高級酒や書画骨董、健康にいい無添加食品など、高齢者市場が拡大しうる分野はまだ無数にあります。彼らが中心に保有している日本人の金融資産の一%、一四兆円でも企業努力でモノ購入に向けさせることができれば、政府の景気対策の何倍もの効果があるのですよ。オレオレ詐欺だけにこの市場を開拓させておくというのは、余りに惜しいことです。それでは、先はどもさんざん語って参りましたが、車だの住宅だの電気製品だののような、一人の消費者が買う量が限定されているような商品、それも現役世代を中心に相手にしている商品の場合はどうなのでしょうか。
たとえば自動車産業。全体的には不振の中、よく売れているのがハイブリッドカーで、レクサスブランドの売れ行きも非常にいいそうですね。これらの成功は、すでに何でも持っている高齢者に買い替えの「言い訳」を与えることがいかに重要かを示しています。つまり彼らは若い頃ほど車に乗るわけではないので、少々車が古くなったとて、買い替えずに我慢しておくこともできないわけではありません。ただ実際にはお金も十分あるので、何か「これは決して無駄遣いではない」という言い訳さえ与えてもらえれば、モノを喜んで買いに走るわけです。ハイブリッドカーの場合の言い訳は実利面と理想面と二つもあります。前者がエコカー減税や買い替え補助金であり、後者が「地球環境を考えるのはいいことだ」という大義名分です。
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