地球規模で事業をしている多国籍企業にとっては、戦後一貫して自由化を主張してきたアメリカ政府の経済戦略は好ましく、協調できる政策は少なくないであろう。しかし多国籍企業の経済活動の規模がさらに大きくなり、発展途上国の経済力も上昇して、世界貿易の全面的な自由化を求めるようになれば、アメリカ国内の保護貿易グループとは協調できなくなることは、十分に考えられる。現に中米貿易摩擦でのアメリカの国論の不一致は、両者の利益が対立していることを示している。
そのうえ、ヨーロッパや日本の多国籍企業によるアメリカへの投資もまた盛んである。一九九七年末までの投資残高は、イギリスが一二六九億ドル、日本が二一三五億ドル、オランダが八四九億ドル、ドイツが六九七億ドルに達している。これらの企業を追って、韓国の電子企業も、まずアメリカに進出し、次にメキシコに移動して、対米輸出用のテレビを生産している。アメリカの最後の唯一のテレビーメーカーであったゼニスも、韓国資本によって買収された。
テレビは戦前にアメリカで発明され、戦後いちはやくその大量生産が開始され、アメリカのテレビ文化が世界を席捲したのであるが、今はアメリカの電気屋からアメリカ製テレビは姿を消してしまった。しかし、大部分のアメリカ人はそれを嘆いてはいないであろう。アメリカ人は、品質が良く値段が安くありさえすれば、どこの国の製品であっても、こだわりなく買うのである。
そうすると、世界の政治経済は、いつまでも一極集中にとどまっているわけには行かないであろう。それが不意に起これば、ドルが暴落して世界経済は混乱するから、二一世紀の前半には、世界はいかにして一極集中から多極化へと軟着陸するかという課題に直面しよう。中国の外貨準備高は一四〇〇億ドルのあたりだが、そのうち米ドルは全体の六〇%前後を占め、六〇〇億ドルの米国債を所有していると言われる。ドルの低落のリスクを緩和するために、そのドルをユーロその他に変える可能性が高いとも言われる。世界経済の多極化は、こういう道筋からも進む。
2015年12月7日月曜日
2015年11月7日土曜日
ユーロ市場の縮小と危惧の嵐
フランクリン、ヘルシュタット両行倒産に端を発したユーロ市場の混乱と逼迫は、ユーロ市場全体に縮小と危惧の嵐をまきおこしたが、七五年に入ってようやく回復をみせ、このユーロ資金取入れ難の経験から国際銀行群は競ってユーロ債、ことにFRNの発行にのりだすことになった。本来、短期資金調達に特色ある各国の商業銀行は、金利変動リスクある固定金利債よりも変動利付債に発行者としてはなじみやすい点が多い。このように日米欧の商業銀行が自行の中長期資金調達源として拡大してきたFRN市場は、シンジケート・ローン市場の大口借入れ先であるソブリン(国、政府機関、国家金融機関)の注目をひくようになり、これらソプリンが大量の借り手群として登場することとなった。
その理由は発行コストが安いこと、資金調達チャンネルが多様化できること、より多くの投資家層に食いこみうること、機動的な調達ができ、さらに一度に高額の長期資金獲得が可能であることなどである。そしてローン市場が八二年の発展途上国累積債務爆発後に完全に停滞したのを尻目に、毎年発行高は増加を示し、八四年以降、毎年一、〇〇〇億ドルを超える発行額に達した。たとえば八五年の英国向け二五億ドルの超大型FRNまで出現するにいたった。八三年は、債券発行が明らかにシンジケート・ローンの組成額を超過した分水嶺である。このようなユーロ債市場の発展は、やがてユーロ市場における証券化の大きな波を起こしてゆくこととなる。
その理由は発行コストが安いこと、資金調達チャンネルが多様化できること、より多くの投資家層に食いこみうること、機動的な調達ができ、さらに一度に高額の長期資金獲得が可能であることなどである。そしてローン市場が八二年の発展途上国累積債務爆発後に完全に停滞したのを尻目に、毎年発行高は増加を示し、八四年以降、毎年一、〇〇〇億ドルを超える発行額に達した。たとえば八五年の英国向け二五億ドルの超大型FRNまで出現するにいたった。八三年は、債券発行が明らかにシンジケート・ローンの組成額を超過した分水嶺である。このようなユーロ債市場の発展は、やがてユーロ市場における証券化の大きな波を起こしてゆくこととなる。
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