九四年末から金融機関の破綻処理に取り組んだとき、大変困った。預金保険制度の通りに実行すれば、一〇〇〇万円を超える預金は、全額は戻ってこない。国民はそんなこととは夢にも思っていないから、大混乱が起るだろう。そこで九五年六月に、「五年間はペイオフしない(預金は全額保護する)、そのかわり五年以内に情報開示などペイオフができるように環境整備をする」との方針を打ち出した。
当時はむしろ、五年は長すぎる、もっと早くペイオフを発動しろ、との批判を受けた。ある評論家からは、この方針が不良債権処理を遅らせ、わが国の金融危機を招いた、とまでのお叱りを受けた。批判の背景には、庶民の小口預金は保護する必要があるが、金持ちの大口預金は切り捨てられても仕方がない、との感情がある。しかし困ったことに、金融システムにとって一番怖いのは、影響が大きく逃げ足の速い金持ちの大口預金なのである。感情論と政策論には大きなズレがあった。
アメリカでは銀行が破綻したときにはすべてペイオフされる、との誤解がある。しかし破綻処理のうちペイオフという極端な手法が適用されたのは、全体の五%程度である。しかもそれはわが国で言えば小さな信用組合程度の規模のものを対象としていた。拓銀や長銀のような基幹金融機関にペイオフを適用するなどということは、全く考えられていない。ごく最近では、金融情勢が改善されたこともあろうが、小規模のものの適用例もなくなった。
九五年六月に、五年後には預金保険法に定められている通りペイオフもできるようにしたい、と説明した。同時にその時、「ペイオフは経済社会全体から見てコストの大きな処理方式である。金融機関の破綻処理に際しては、基本的には、資金援助(合併など)の可能性をまず追求することが適当である。」との方針も明らかにしている。また、資金援助以外の破綻処理方式の多様化が必要とも考え、実際そのような制度はある程度整備されている。
2015年12月7日月曜日
世界貿易の全面的な自由化
地球規模で事業をしている多国籍企業にとっては、戦後一貫して自由化を主張してきたアメリカ政府の経済戦略は好ましく、協調できる政策は少なくないであろう。しかし多国籍企業の経済活動の規模がさらに大きくなり、発展途上国の経済力も上昇して、世界貿易の全面的な自由化を求めるようになれば、アメリカ国内の保護貿易グループとは協調できなくなることは、十分に考えられる。現に中米貿易摩擦でのアメリカの国論の不一致は、両者の利益が対立していることを示している。
そのうえ、ヨーロッパや日本の多国籍企業によるアメリカへの投資もまた盛んである。一九九七年末までの投資残高は、イギリスが一二六九億ドル、日本が二一三五億ドル、オランダが八四九億ドル、ドイツが六九七億ドルに達している。これらの企業を追って、韓国の電子企業も、まずアメリカに進出し、次にメキシコに移動して、対米輸出用のテレビを生産している。アメリカの最後の唯一のテレビーメーカーであったゼニスも、韓国資本によって買収された。
テレビは戦前にアメリカで発明され、戦後いちはやくその大量生産が開始され、アメリカのテレビ文化が世界を席捲したのであるが、今はアメリカの電気屋からアメリカ製テレビは姿を消してしまった。しかし、大部分のアメリカ人はそれを嘆いてはいないであろう。アメリカ人は、品質が良く値段が安くありさえすれば、どこの国の製品であっても、こだわりなく買うのである。
そうすると、世界の政治経済は、いつまでも一極集中にとどまっているわけには行かないであろう。それが不意に起これば、ドルが暴落して世界経済は混乱するから、二一世紀の前半には、世界はいかにして一極集中から多極化へと軟着陸するかという課題に直面しよう。中国の外貨準備高は一四〇〇億ドルのあたりだが、そのうち米ドルは全体の六〇%前後を占め、六〇〇億ドルの米国債を所有していると言われる。ドルの低落のリスクを緩和するために、そのドルをユーロその他に変える可能性が高いとも言われる。世界経済の多極化は、こういう道筋からも進む。
そのうえ、ヨーロッパや日本の多国籍企業によるアメリカへの投資もまた盛んである。一九九七年末までの投資残高は、イギリスが一二六九億ドル、日本が二一三五億ドル、オランダが八四九億ドル、ドイツが六九七億ドルに達している。これらの企業を追って、韓国の電子企業も、まずアメリカに進出し、次にメキシコに移動して、対米輸出用のテレビを生産している。アメリカの最後の唯一のテレビーメーカーであったゼニスも、韓国資本によって買収された。
テレビは戦前にアメリカで発明され、戦後いちはやくその大量生産が開始され、アメリカのテレビ文化が世界を席捲したのであるが、今はアメリカの電気屋からアメリカ製テレビは姿を消してしまった。しかし、大部分のアメリカ人はそれを嘆いてはいないであろう。アメリカ人は、品質が良く値段が安くありさえすれば、どこの国の製品であっても、こだわりなく買うのである。
そうすると、世界の政治経済は、いつまでも一極集中にとどまっているわけには行かないであろう。それが不意に起これば、ドルが暴落して世界経済は混乱するから、二一世紀の前半には、世界はいかにして一極集中から多極化へと軟着陸するかという課題に直面しよう。中国の外貨準備高は一四〇〇億ドルのあたりだが、そのうち米ドルは全体の六〇%前後を占め、六〇〇億ドルの米国債を所有していると言われる。ドルの低落のリスクを緩和するために、そのドルをユーロその他に変える可能性が高いとも言われる。世界経済の多極化は、こういう道筋からも進む。
登録:
投稿 (Atom)