2012年8月1日水曜日

変革を志向する民主党

国民健康保険をめぐる一件のように、民主党は国家の手による社会政策を推し進め、社会全体の福祉をはかろうとする傾向をもっている。反対に共和党は、アメリカを自由で開放的な社会として保持し、すべての人に活躍の機会を保証することこそが、自分たちの至上命令だと信じている。

これをもって民主党は進歩的であり、共和党は自由主義的だなどということは一概にはいえないが、第一次世界大戦時代の大統領ウッドロー・ウィルソン(民主党)は、民主党と共和党の違いを次のように説明したことがあった。

民主党と共和党の主な相違点というのは、保守反動派の人間が共和党のなかでぱ大多数を占めるのにたいして、民主党のなかでは少数派だということにある。これはどの政党にも程度の差こそあれ「保守反動派」がいるということなのであろうが、たしかにウィルソンの指摘するように、より前向きに政治や社会の現状を変革していこうという声は、共和党よりも民主党のなかに大きい。

たとえば、二〇世紀に入ってからの民主党出身の大統領を順番に並べてみただけでも、その変革寄りの傾向が浮かびあがってく ウッドロー・ウィルソン、フランクリン・ルーズペルト、ハリー・トルーマン、ジョン・ F・ケネディ、リンドン・ジョンソン、ジミー・カーター、ウィリアムークリントン。

太平洋のこちら側でアメリカを眺めている日本の私たちは、どうしてもアメリカの大統領の外交政策だけに目が行きがちであり、アメリカの国内政策のことはついつい忘れてしまう。しかしアメリカの大統領にとっては、外交問題はあくまでも二次的な問題に過ぎない。

彼らは、トロトロとした国内の政治上のかけひきや闘争のなかから生まれてきた政治家なのであり、国内の政策を無視してはその存在があぶなくなる。大統領が政治生命をかけて全力投球するのは、やはり内政問題、つまり国内向けの政策なのである。

ここにあげた民主党の大統領たちの国内政策を眺めわたしてみても、いかにも民主党らしい政策が目につく。たとえばウッドロー・ウィルソンの政策の中心は、アメリカの巨大な企業の活動を抑え込み、さまざまな規制を強化することによって、一般のアメリカ人の権利を保護するところにあった。そこで、鉄道事業の規制強化などさまざまな法律がつくられ、企業を監視するための対策が講じられた。