2015年11月7日土曜日

ユーロ市場の縮小と危惧の嵐

フランクリン、ヘルシュタット両行倒産に端を発したユーロ市場の混乱と逼迫は、ユーロ市場全体に縮小と危惧の嵐をまきおこしたが、七五年に入ってようやく回復をみせ、このユーロ資金取入れ難の経験から国際銀行群は競ってユーロ債、ことにFRNの発行にのりだすことになった。本来、短期資金調達に特色ある各国の商業銀行は、金利変動リスクある固定金利債よりも変動利付債に発行者としてはなじみやすい点が多い。このように日米欧の商業銀行が自行の中長期資金調達源として拡大してきたFRN市場は、シンジケート・ローン市場の大口借入れ先であるソブリン(国、政府機関、国家金融機関)の注目をひくようになり、これらソプリンが大量の借り手群として登場することとなった。

その理由は発行コストが安いこと、資金調達チャンネルが多様化できること、より多くの投資家層に食いこみうること、機動的な調達ができ、さらに一度に高額の長期資金獲得が可能であることなどである。そしてローン市場が八二年の発展途上国累積債務爆発後に完全に停滞したのを尻目に、毎年発行高は増加を示し、八四年以降、毎年一、〇〇〇億ドルを超える発行額に達した。たとえば八五年の英国向け二五億ドルの超大型FRNまで出現するにいたった。八三年は、債券発行が明らかにシンジケート・ローンの組成額を超過した分水嶺である。このようなユーロ債市場の発展は、やがてユーロ市場における証券化の大きな波を起こしてゆくこととなる。