2016年2月6日土曜日

今なお君臨するドル

第二次大戦後、半世紀になんなんとする、この歴史的時間の経過につれて、アメリカ合衆国とそのドルほど大きく揺れ動いた国家と通貨は比類がないのではないか。

アメリカの最高の時代は一九四五年から五〇年代末までのわずか一五年にすぎなかった。五八年ころより米国国際収支の慢性的な赤字、ドルの対外流出、対外ドル債務の累増、そしてドルの弱体化は一貫して続くことになる。

一九四四年七月、米国ニューハンプシャー州の保養地ブレトン・ウッズでの連合国通貨金融会議において決定された、金・ドル連結による戦後の国際金融・通貨制度は、ドルが攻撃を受けるたびに動揺し、ドル不安は金価格のおさえようもない騰貴に直結した。

そして、ついに一九七一年八月一五日のニクソン大統領によるドルの金との交換性停止にいたり、ブレトン・ウッズ体制は完全に崩壊し、その幕を閉じたのであった。

もちろん、七一年一二月から七三年二月までのスミソニアン合意による一時的な固定相場復帰という一時の晴れ間はあったにせよ、七三年二月、三月からは全世界が変動相場制に突入し、現在にいたっている。

ドルはかくて金との結びつきを放棄して、他の通貨と同様、ドルの背後に何もない不安定な不換紙幣に転落した。しかし、腐っても鯛は鯛である。

ドルの没落と人はいうが、国際通貨として依然、世界に君臨しているのはドルであり、ドイツ・マルクやスイス・プランや日本の円がアメリカのドルの地位を脅かすなどということはありえな。いのである。せいぜい、補完的・脇役的なポストにいるにすぎない。