2015年7月7日火曜日

国連の機能強化を働きかける目的

国連キプロス平和維持軍に英国が、国連レバノン暫定軍にフランスが要員を派遣するなどの例はあったが、このUNIKOMにはP5がこぞって参加するという前例のない事態となった。これには、P5が結束して湾岸危機の再発を防ぎ、イラクに対して国際社会の意思を鮮明にする、という政治的な意図もあった。しかし、伝統的なPKOのルールの一部がこれによって崩れ、新たな経験則に道を開いたことも否定できない事実だ。このように、PKOの性格は可塑的なもので、次々に現実に対応して変化することを前提としている。UNIKOMに見られた変化が、決して例外的なものではなく、むしろ「冷戦後」を迎えた新時代の国連の先触れであったことは、その後、ガリ事務総長が提案した画期的な報告書で明らかになった。

九二年一月三十一日、ニューヨークの国連本部で、極めて注目すべき会議が開かれた。史上初めてという安保理の首脳会議である。 出席したのは米国のブッシュ、ロシア、エリツイン、フランスのミッテラン各大統領、英国のメージャー、中国の李鵬各首相の他、非常任理事国からは日本の宮沢首相も出席した。ちょうどその前月のクリスマス・イブに、国連における旧ソ連の地位は、ロシアに引き継がれることが決まっていた。首脳会議は英国が呼びかけたもので、旧ソ連の崩壊という大きな変化に直面した国連が、冷戦後の新時代にどのような役割を果たすかについて話したのが狙いだった。また、この月に就任した新事務総長のガリ氏を、理事国の首脳が一致して支援することを明確にし、国連の機能強化を働きかける目的もあった。