2012年6月8日金曜日

大豆油市場を襲う需要減の渦

食用油の主力品種、大豆油の価格が急落した。メーカーが在庫一掃のため大幅に値下げした。そこに見えたのは、減産しても需要減少の渦にどんどん飲み込まれ、次々と値下げを迫られるメーカーの姿だった。

レストランや総菜店といった中・小口需要家は斗缶品(1缶は16.5キログラム)を買う。3月末は月初から1割下落し、元卸価格で1缶あたり3300円が中心。昨年11月に約3年ぶりに下落に転じ、その後下げ足を強めた。マーガリンメーカーなど大口需要家向けのローリー品も1―3月分が昨年10―12月比で約3割安い1キログラム160円が中心となった。
「外食店は売り上げ不振の中でコスト削減を強く意識し、油をぎりぎりまで使っている」。流通業者が説明する。あるメーカーは顧客から「揚げ物に最大で何回まで使えるのか」などとの問い合わせが増えたという。

需要は急減し、メーカーは在庫をためこんだ。農林水産省によるとメーカー全体の在庫量は昨年12月、1月、2月とも前年同月比5割増の多さだった。
メーカー全体で1月の搾油量を前年同月比1割強落としたのに、2月の在庫が高い水準だったことは需要不足の深刻さをはっきり示した。戦後最悪の景気後退とわかっていても、この数字には誰もが目をむいた。

問題はこの価格下落の構図が続くかどうかだ。4月、5月は、行楽シーズンを迎え食用油の需要が1年でもっとも高まる。この時期の販売量や価格がメーカーの1年の業績を占うとも言える。
値下がりは需要家や消費者に恩恵をもたらす面がある。一方、メーカーにとっては、仮に春需が消えて需給が緩む流れが続くようだと、大豆油価格が一段と値下がりし、需要減と価格下落のダブルパンチとなる可能性が高い。