2012年5月23日水曜日

石化業界、減産緩和へ 中国向け輸出価格は上昇カーブ

昨秋以降の世界的な景気後退で大幅な減産を強いられてきた石油化学大手が、4月以降の減産緩和を検討し始めた。国内で在庫調整が進んだことが主因だが、中国の需要が上向いていることも追い風となりそうだ。

石化大手は現在、基礎原料エチレンの生産を能力比70%程度に落としている。食品包装材向けのポリエチレン、自動車バンパーなどに使うポリプロピレン、食品トレーが主用途のポリスチレン、水道管や壁紙といった建材の材料になる塩化ビニール樹脂など、主要樹脂の生産・出荷量は1月、2月とも前年同月比3―4割のマイナスだ。

自動車、住宅、家電など石化製品の主な用途分野の需要が軒並み落ちているためだが、減産の効果もあり国内在庫は消化が進んでいるようだ。樹脂大手は「新年度が始まる4月になれば注文も増えるのでは」と見る。川下の中間製品や最終製品のメーカー、流通業者も年度末の3月には在庫を極力減らすが、年度が変われば、多少は手持ち在庫を上積みするとの期待がある。トヨタ自動車が5月にも減産を緩和する方針を固めるなど、「最悪の時期は過ぎつつある」(化学大手)との認識が広がっている。

内需回復への期待とともにカギになるのが中国の需要動向だ。中国向け輸出価格はこのところ上昇カーブを描いている。3月下旬の東アジアの取引価格(中心値)はエチレンが1トン630ドルと直近安値の昨年11月比6割上昇、ポリプロピレンは約35%上がっている。景気対策などにより国内需要が上向いているためだ。

「減産を緩和するかどうかは中国の4月の荷動きと価格次第」。ある樹脂メーカー幹部はこう打ち明ける。中国向け輸出量が回復し、価格も採算がとれる水準に達すれば、生産を増やす判断を下すという。日本の素材生産や価格は過去数年、中国の成長に引っ張られてきた。回復に向かう局面でも中国に頼らざるを得ないのが現状だ。